「新興国が伸びている」というニュースを見ても、正直なところピンとこない。カンボジアと聞くと、少し不安なイメージが先に浮かぶ。そんな方も多いのではないでしょうか。
女性のための株式投資スクール「ハナミラ」では、2026年9月に「カンボジア海外視察ツアー」を開催しました。2泊3日、総勢23名。ママや会社員として毎日忙しく過ごしているメンバーが、自分の足で首都プノンペンの街を歩き、成長している国の空気を肌で感じてきました。

この記事では、そのツアーの様子を公式レポートをもとにご紹介しながら、カンボジア経済の基本を公的なデータで整理します。さらに、現地で感じた「伸びる国を見る目」を、日本株の企業選びにどう生かせるのか。現地に行かなくてもできる調べ方まで、やさしくお伝えします。
先に結論からお伝えします。
カンボジアは、15〜64歳の働く世代が人口の約65%を占める若い国で、ここ数年は年5〜6%前後の経済成長を続けてきました。ハナミラのメンバーが現地で見たのは、新しい空港、高層ビル、にぎわう商業施設といった「成長の途中にある街」の姿です。そして、国の成長を支えて利益を生み出しているのは企業だという気づきでした。この「人口・所得・インフラ」という見方は、日本株で企業を選ぶときにも使えます。決算資料の地域別売上を見るなど、自宅にいながらできる方法もあります。一方で、新興国には為替や情報の少なさなどの注意点もあります。良い面と気をつけたい面の両方を知ったうえで、自分に合った関わり方を選ぶことが大切です。
ハナミラがカンボジアへ視察に行った理由
「まさか自分が海外視察に行くなんて」から始まった旅
ツアーのあと、参加したみなさんから一番多く聞こえてきたのは「まさか自分の人生で、海外視察に行く日が来るなんて」という言葉でした。
ハナミラは、投資経験のない女性が多く学んでいるスクールです。累計受講生は1,500名以上、そのうち約8割が投資未経験からのスタートです。普段は株式投資の基礎や企業の見方を学んでいるメンバーが、今回は教室を飛び出し、海外の街そのものを「教材」にしました。

ネットの情報だけでは分からない「本当の姿」を見るため
カンボジアと聞いて浮かぶのは、「治安や衛生面が心配」「まだ貧しい国」といったイメージかもしれません。実際、ツアーに参加したメンバーの中にも、出発前は同じような不安を持っていた人がいました。
ところが、ネットで見かける情報と、いま現地で起きていることには、ずれがあることも少なくありません。情報が更新されるスピードよりも、街が変わるスピードのほうが速いことがあるからです。
ハナミラが大切にしているのは、「誰かが言っていたから」ではなく「自分で調べて、自分で確かめる」姿勢です。株式投資でも、ニュースの見出しやSNSの評判だけで判断するのではなく、決算資料や数字を自分の目で確認することを重視しています。その考え方を、国という大きな単位で体験してみる。それが今回の視察の大きなテーマでした。

成長する国を見ると、企業を見る目が変わる
もうひとつの理由は、「経済が成長するとはどういうことか」を実感することです。教科書で「人口が増えると消費が伸びる」と読むのと、若い人たちでにぎわう商業施設を実際に歩くのとでは、理解の深さがまったく違います。
この体験は、日本株で企業を選ぶときにも役立ちます。会社の売上は、どこかの国や地域で、誰かがお金を使うことで生まれます。成長している市場がどんな姿をしているのかを知っておくと、決算資料に並ぶ数字の意味が、ぐっと立体的に見えてくるのです。
なお、今回の視察はカンボジアの株や不動産を買うことを目的としたものではありません。あくまで「成長の現場を自分の目で見る」ための学びの旅です。この記事も、特定の国や商品への投資をおすすめするものではないことを、先にお伝えしておきます。
人口は約1,790万人。働く世代が厚い「若い国」
まずは基本の数字から見ていきましょう。カンボジアの人口は約1,790万人で、首都はプノンペンです(出典:外務省「カンボジア王国 基礎データ」2026年4月27日更新、国連人口基金の2025年の数値による。https://www.mofa.go.jp/mofaj/area/cambodia/data.html)。日本の人口のおよそ7分の1ほどの規模です。
注目したいのは年齢の構成です。国連の人口推計をもとにした資料によると、2025年のカンボジアは、0〜14歳が29.5%、15〜64歳が64.6%、65歳以上が5.9%となっています(出典:経済産業省「医療国際展開カントリーレポート カンボジア編」2026年版、国連「World Population Prospects」より)。
日本と比べてみると、その違いがよく分かります。日本は15歳未満が11.2%、15〜64歳が59.6%、65歳以上が29.3%です(出典:総務省統計局「人口推計(2024年10月1日現在)」2025年4月公表)。日本では3〜4人に1人が65歳以上なのに対して、カンボジアでは65歳以上は20人に1人ほど。子どもの割合も、日本の2倍以上あります。
ハナミラ公式noteのレポートでも、カンボジアの平均年齢は「2025年時点で26歳前後」と紹介されています。実際に街を歩いていても、若い人たちの姿がとても目立ったそうです。
働き手となる若い世代が多く、子どもやお年寄りを支える負担が比較的軽い時期は「人口ボーナス期」と呼ばれます。一般に、この時期は働く人の数が増え、消費も伸びやすいため、経済が成長しやすいといわれています。ただし、人口が若いだけで自動的に成長が約束されるわけではなく、教育や仕事の受け皿があってはじめて力になる点も覚えておきたいところです。

経済成長率は年5〜6%前後で推移
次に、国の経済の勢いを表す「実質GDP成長率」を見てみます。GDP(国内総生産)とは、その国の中で1年間に生み出されたモノやサービスの合計のこと。実質GDP成長率は、物価の上がり下がりの影響を除いて、それが前の年から何%増えたかを示す数字です。
カンボジアの実質GDP成長率は、2023年が5.0%、2024年が6.0%、2025年が5.0%と、年5〜6%前後で推移しています(出典:JETRO「カンボジア 基礎的経済指標」2026年7月7日更新)。外務省の基礎データでも、2022年から2025年の成長率は「5%台」とまとめられています。
今後の見通しについては、アジア開発銀行(ADB)が2026年4月に、カンボジアの2026年の成長率を4.5%、2027年を5.0%と予測しています。これは中東情勢が早めに落ち着いた場合を前提にした予測値です(出典:アジア開発銀行(ADB)ニュースリリース 2026年4月10日 https://www.adb.org/news/cambodia-economy-grow-4-5-percent-2026-under-early-middle-east-stabilization-scenario)。
ここで大切なのは、予測はあくまで予測だということです。世界経済の状況や原油の値段、主要な輸出先の景気によって、見通しは何度も修正されます。国際機関の予測も、新しいデータが出るたびに見直されるのがふつうです。「毎年5%以上伸びる国」と決めつけず、「これまでは比較的高い成長を続けてきたが、外の影響も受けやすい国」と受け止めるのが、ちょうどよい距離感だと思います。
参考までに、1人あたりのGDPは2,760米ドルほどです(出典:外務省「カンボジア王国 基礎データ」、2025年のIMF推定値)。日本と比べるとまだ大きな差がありますが、だからこそ「これから所得が伸びていく余地がある段階」ともいえます。
主要産業は縫製を中心とした製造業、観光、農業、建設
カンボジアの産業の割合は、サービス業がGDPの44.0%、工業が38.2%、農業が17.8%です(出典:外務省「カンボジア王国 基礎データ」、2024年の数値)。
工業の中心は、衣類や靴などをつくる縫製業です。ADBの2026年4月の見通しでも、製造業は「縫製品の受注が好調なことに加え、電気部品、タイヤ、家具など縫製以外のものづくりも広がっている」として、2026年に7.3%の成長が見込まれています。一方、米やカシューナッツの輸出に支えられる農業は0.9%、観光を含むサービス部門は2025年の3.4%から2026年は2.8%へと、伸びがゆるやかになる予測です(いずれもADBの予測値。出典は上記ADBニュースリリース)。
街を歩くと、建設中のビルやクレーンをたくさん見かけます。建設業も、首都の景色を変えている大きな産業のひとつです。こうした「どの産業が伸びていて、どこが落ち着いてきているのか」を見ることは、国全体の数字だけでは見えない動きをつかむヒントになります。
通貨はリエル。でも街では米ドルも広く使われている
カンボジアの通貨は「リエル」です。為替レートは1米ドル=約4,011リエル(2025年3月時点)とされています(出典:外務省「カンボジア王国 基礎データ」)。
ただ、カンボジアでは自国通貨のリエルと並んで、米ドルが広く使われていることが知られています。JICA(国際協力機構)の研究所が2024年1月に紹介した研究では、カンボジアのドル化は「金融システムの発達と一体化している」一方で、「都市部が中心であり限定的であること、また都市部でも徐々にドル通貨からリエル通貨の利用に移行している」と説明されています(出典:JICA緒方貞子平和開発研究所「『Cambodian Dollarization』発刊セミナー開催」2024年1月11日掲載)。
旅行者にとっては「ドルで支払いができて、おつりがリエルで返ってくる」といった場面もあり、少し不思議な感覚かもしれません。この通貨の事情は、後ほどお話しする「新興国投資で気をつけたいこと」にもつながってきます。
2泊3日で見たもの(空港・街・商業施設・夜景)
到着してすぐに驚いた、新しい空港
旅の最初の驚きは、到着した空港でした。メンバーが降り立ったのは、プノンペンの新しい玄関口として開業してまだ日の浅い空港です。
「空港がとても綺麗で、建築の美しさにびっくり」という声が、到着してすぐにあがりました。
空港は、国の「顔」であると同時に、人やモノの流れを支える大切なインフラ(道路・空港・電気・水道など、暮らしや経済を支える土台となる設備)です。新しい空港ができると、海外から訪れる人や企業の動きが変わり、周辺の街づくりも進みやすくなります。到着した瞬間から、「この国はいま、土台をつくり直している最中なんだ」と感じられたことは、今回の旅の象徴的な場面でした。

全席VIPシートのバスで、移動まで快適に
このツアーが心に残る旅になった一番の理由は、現地でホストを務めてくださった川崎昌子社長と、現地スタッフのみなさんの手厚いおもてなしでした。
23名での移動に用意されたバスは、全席VIPシート。足元までゆったり伸ばせるので、早朝や夜の移動もまったく疲れなかったそうです。初めての海外視察、それも大人数での移動となると、体力面が心配になるものです。移動の快適さは、学びに集中するための大切な条件だと改めて感じました。
参加者からは「行き届いたおもてなしをいただいて、感動の連続でした」という声も寄せられています。また、川崎社長ご自身の生き方や考え方に心を動かされたメンバーも多く、「お話がとても勉強になって、濃い時間でした」「女性の可能性を本気で応援してくれる素敵な方で、私のロールモデルになりました」といった感想も聞かれました。
首都の夜景を一望するバーと、ホテルでのディナー
夜は、首都の夜景を一望できる「ローズウッドホテル」のバーへ。高い場所から街全体を見渡すと、昼間に歩いた中心部と、開発が進むエリアとの位置関係がつかみやすくなります。地上を歩くのとはまた違った角度から、首都の広がりを感じられる時間でした。
「マリオットホテル」でのディナーも、個人旅行ではなかなか手配できない体験でした。国際的なホテルが首都に集まっていること自体も、その国にビジネスや観光で訪れる人が増えていることを感じさせる風景のひとつです。
王宮と、街の中心部から開発エリアまでの街歩き
カンボジアの歴史と文化を感じられる王宮も訪れました。きらびやかな建物と、その周りに広がる現代的な街並み。歴史ある場所と新しい開発が隣り合っている景色は、この国がいま大きな変化の途中にあることを物語っているようでした。
ツアー中は、街の中心部から、開発が進むエリアまで、さまざまな建物や街並みを見て回りました。現地の方から、この国のこれからの街づくりについてお話を伺える機会もありました。
次々と建つ高層ビル、新しく整えられていく道路。歩きながら「10年後、この街はどう変わっているだろう」と想像をふくらませられたのは、現地に来たからこそです。地図や写真では「点」でしか見えないものも、実際に歩くと「線」や「面」としてつながって見えてきます。これも現地ならではの学びです。

にぎわう商業施設で見えた、暮らしの変化
街歩きの中では、プノンペンにある商業施設にも足を運びました。首都プノンペンには、日本でもお馴染みのイオンモールが3つもあります。カンボジアでは、イオンは高級ショッピングモールという位置づけなのだそうです。
にぎわう商業施設を歩いていると、ここでも若い世代の姿が目立ちました。広いモールで買い物や食事を楽しむというスタイルは、所得が伸び、暮らしが変わりつつあることを感じさせる光景です。
市場で必要なものを買う生活から、休日に家族でショッピングモールへ出かける生活へ。こうした「お金の使い方の変化」は、統計の数字だけでは実感しにくいものです。実際にその場に立つことで、成長というものが「人々の暮らしの変化」として見えてきた。それが今回の街歩きで得られた大きな学びでした。
参加者が驚いたこと・感じたこと
「こんなに発展している国だとは思わなかった」
ツアー中、もっとも多く聞かれたのが「こんなに発展している国だとは思わなかった」という驚きの声でした。
出発前に持っていたイメージと、目の前に広がる街並みとの差。高層ビルや大きな商業施設、整えられた道路を前にすると、「自分が知っていたイメージは、いつの情報だったのだろう」と考えさせられます。
これは投資の世界でもよくあることです。昔の印象のまま止まっている会社や業界が、実は大きく変わっていることがあります。逆に、イメージが良いままでも、中身が変わってきていることもあります。「自分の知っている情報は古くないか」と問い直す習慣は、投資をするうえでとても大切です。
「治安が心配だったけど、想像以上に街は清潔で穏やか」
治安について不安を持っていたメンバーもいました。ところが実際には、「治安が心配だったけど、想像以上に街は清潔で、人もすごく穏やか」という感想が聞かれました。
もちろん、旅行の際に注意すべきことがゼロになるわけではありません。海外へ出かける前には、外務省の海外安全情報などで最新の状況を確認しておくことをおすすめします。ただ、漠然とした不安と、実際に確かめた情報とは別のものです。不安をそのままにせず、確かめる。それによって、選べる選択肢が広がることもあります。

「空港がとても綺麗で、建築の美しさに驚いた」
到着直後の空港の印象も、多くのメンバーの心に残りました。最初に目にする建物が新しく美しいというのは、その国の「これから」に向けた意気込みを感じさせるものです。
旅の始まりに「思っていたのと違う」と感じる体験があると、その後の街歩きでも先入観を手放して、目の前のものを素直に見やすくなります。
驚きを「学び」に変えるために
今回のメンバーに共通していたのは、驚きをその場の感想で終わらせず、「なぜこうなっているのか」と考えたことです。
なぜ空港が新しくなったのか。なぜ商業施設に若い人が多いのか。なぜ高層ビルが次々と建つのか。その答えを考えていくと、人口の構成、所得の伸び、インフラの整備、海外からの企業の進出といったキーワードが見えてきます。この「なぜ」を考える力こそ、株式投資で企業を見るときにそのまま生きてくる力です。
「伸びる国」を見る目は日本株選びにも使える
カンボジアで見た景色を、日本株の企業選びにどう生かせるのでしょうか。ここでは、成長する市場を見るときの観点を4つご紹介します。どれも特定の会社をおすすめするためのものではなく、「自分で調べるときの見方」としてお使いください。
観点1 人口の構成を見る(どの世代が多いか)
成長する市場を見るときの出発点は、人口の構成です。働く世代や子育て世代が多い国・地域では、住まい、食品、日用品、衣料品、教育、通信などへの支出が増えやすい傾向があります。一方、高齢の方が多い国・地域では、医療や介護、資産の管理などへの関心が高まりやすくなります。
確認方法:国連の人口推計をもとにした資料や、外務省・JETROの国別の基礎データで、年齢構成や人口の推移を確認できます。日本国内については、総務省統計局の「人口推計」で年齢ごとの割合が公表されています。
具体例:カンボジアでは15〜64歳が約65%、65歳以上は約6%と、働く世代が厚い構成です。日本では65歳以上が約29%を占めています。同じ商品やサービスでも、どちらの市場で売るかによって、伸びしろの考え方が変わってくることが分かります。企業の資料を読むときに「この会社が力を入れている地域は、どんな人口構成だろう」と考えるだけで、見え方が変わります。
観点2 所得の伸びと、お金の使い方の変化を見る
人口の次に見たいのが、所得の伸びです。所得が増えると、人々のお金の使い方が変わります。最初は食べるものや着るものなど生活に必要なものが中心ですが、所得が伸びると、外食、レジャー、美容、教育、旅行といった「暮らしを豊かにするもの」への支出が増えていくといわれています。
確認方法:国別の1人あたりGDPの推移は、外務省やJETROの基礎データで確認できます。また、企業の決算説明資料で「どの商品が、どの地域で伸びているか」が説明されていることもあります。
具体例:今回訪れたプノンペンの商業施設では、若い人や家族連れが買い物や食事を楽しんでいました。カンボジアの1人あたりGDPは2,760米ドルほどで、日本と比べるとまだ差がありますが、「生活必需品から、楽しみのための消費へ」という変化が街の中で始まっているように見えました。日本株を調べるときも、「この会社の商品は、所得が伸びた人が次に欲しくなるものだろうか」という問いを持ってみると、企業の強みや課題が見えやすくなります。
観点3 インフラの整備を見る(街が変わる順番)
空港、道路、電気、水道、通信。こうしたインフラが整うと、人やモノの移動がしやすくなり、新しいお店や工場、住宅が建ちやすくなります。街が大きく変わるとき、多くの場合は先にインフラが整い、その後に商業施設や住まいが広がっていきます。
確認方法:各国政府や国際機関が公表している開発計画、ADBや世界銀行などの国別レポートで、どの分野の整備が進められているかを知ることができます。日本国内でも、自治体の再開発計画や新しい駅・道路の計画は公開されていることが多いです。
具体例:今回の旅では、開業してまだ日の浅い新しい空港に降り立ち、開発が進むエリアも歩きました。インフラの整備は、建設、資材、輸送、通信など、さまざまな業種に関わります。日本株を見るときも、「この会社の仕事は、街が変わるどの段階に関係しているのか」と考えてみると、ニュースと企業の業績のつながりが理解しやすくなります。ただし、インフラ関連の話題は期待が先に株価に表れることもあるため、話題性だけで判断しないことが大切です。

観点4 企業がどこで稼いでいるかを見る(海外売上の比率)
ツアーの中で、メンバーが気づいたのは「国が成長するとき、その成長を支えて利益を生み出しているのは企業だ」ということでした。
日本の上場企業の中には、国内だけでなく海外でも事業を広げている会社がたくさんあります。少子高齢化が進む日本の中だけでは売上を伸ばしにくい業種でも、海外の成長市場に出ていくことで、新しい伸びしろを探している会社もあります。
確認方法:多くの上場企業は、決算短信や有価証券報告書の中で、売上を地域ごとに分けて示しています。「所在地別」「地域別」「セグメント情報」といった言葉を探してみてください。日本、北米、欧州、アジアなどに分けて、それぞれの売上や利益が書かれていることが多いです。
具体例:たとえば、ある会社の売上が「日本70%、アジア20%、その他10%」だったとします。数年分を並べてみて、アジアの割合が少しずつ増えているなら、その会社は海外の成長市場で存在感を高めつつあるのかもしれません。反対に、海外での売上は伸びていても利益が出ていない場合は、まだ投資の段階で、コストが先にかかっている可能性もあります。売上と利益をセットで見ることがポイントです。
ここで注意したいのは、「成長している国に進出している会社だから、株が上がる」とは限らないということです。現地での競争、為替の動き、その国の景気の波など、業績に影響する要素はたくさんあります。成長する市場を知ることは、企業を見るための「ひとつの視点」であって、それだけで答えが出るものではありません。いくつもの視点を組み合わせて、自分なりに判断していくことが大切です。
4つの観点を組み合わせて考える
ここまでの4つの観点は、ばらばらに使うよりも、組み合わせることで力を発揮します。
- 人口の構成から「どんな需要が伸びそうか」を考える
- 所得の伸びから「お金の使い方がどう変わりそうか」を考える
- インフラの整備から「街がどの段階にあるか」を考える
- 企業の地域別売上から「その変化を、どの会社がどれくらい取り込めているか」を確かめる
この流れで考えると、ニュースで見た海外の話題と、日本の企業の決算資料とが、一本の線でつながってきます。ハナミラで学んでいる企業分析も、こうした「つながり」を自分で見つけていく作業の積み重ねです。
現地に行かなくてもできる「成長する会社」の調べ方
海外視察は貴重な体験ですが、誰もがすぐに行けるわけではありません。でも、成長する市場や企業を調べる方法は、自宅にいながらでもたくさんあります。ここでは、今日から試せる方法をご紹介します。
決算短信と有価証券報告書で「地域別売上」を確認する
決算短信とは、上場企業が3か月ごとに発表する業績の速報のことです。有価証券報告書は、1年に1回まとめて提出される、より詳しい会社の報告書です。
どちらも、企業のホームページの「IR情報(投資家向け情報)」のページや、金融庁の電子開示システム「EDINET」で見ることができます。決算短信や有価証券報告書の後半にある「セグメント情報」や「地域ごとの情報」の部分に、日本・アジア・北米などの地域ごとの売上が載っていることが多いです。
ポイントは、1年分だけでなく、3〜5年分を並べてみることです。海外の売上が増えているのか、横ばいなのか、減っているのか。流れで見ることで、その会社が海外でどんな歩みをしてきたのかが見えてきます。
統合報告書・決算説明資料で「会社が何を目指しているか」を読む
数字だけでは、会社がこれから何をしようとしているのかまでは分かりません。そこで役立つのが、統合報告書や決算説明資料です。
統合報告書とは、売上や利益などの数字に加えて、会社の考え方や戦略、環境や社会への取り組みなどをまとめた冊子のような資料です。決算説明資料は、決算の内容を図やグラフで分かりやすく説明したものです。
これらの資料には、「どの地域に力を入れるのか」「どんな商品を伸ばしたいのか」といった会社の方針が書かれていることがあります。数字の動きと、会社が語っている方針が合っているか。ここを見比べることで、計画が順調に進んでいるのか、それとも課題があるのかを考えるヒントになります。

IRページの「よくある質問」と「月次データ」も役立つ
企業のIRページには、決算資料のほかにも役立つ情報があります。たとえば「よくある質問」のページでは、海外展開の状況などについて、投資家からの質問に答えている会社もあります。
また、小売業や外食業などでは、毎月の売上や店舗数の推移を「月次データ」として公開している会社もあります。海外の店舗数が少しずつ増えている様子などを、毎月追いかけることができます。
ニュースは「見出し」ではなく「中身と出どころ」で読む
海外のニュースは、見出しだけを見ると、とても良く見えたり、とても悪く見えたりすることがあります。「急成長」「失速」といった強い言葉に心が動いたときこそ、一度立ち止まってみましょう。
確認したいのは、その情報の出どころです。政府や国際機関の発表なのか、企業の公式発表なのか、それとも誰かの意見なのか。また、それがいつの情報なのかも大切です。今回のカンボジアの例のように、数年前のイメージのまま止まっている情報もあります。数字が出てきたら、元になった資料までさかのぼって確かめる習慣をつけておくと、情報に振り回されにくくなります。
地図アプリで「出店の広がり」を見てみる
意外と使えるのが、地図アプリです。気になる会社の店舗や施設を地図アプリで検索してみると、どの国のどの街に、どれくらい出店しているのかを目で見て確かめることができます。
街のどのあたりに店があるのか、周りにどんな施設があるのか。ストリートビューなどの機能が使える場所なら、街並みの雰囲気をのぞくこともできます。もちろん、地図だけで業績が分かるわけではありませんが、決算資料に書かれている「海外展開」が、実際にはどんな景色の中で行われているのかをイメージする助けになります。
自分の暮らしの中にも「成長のヒント」はある
もうひとつおすすめしたいのが、自分の暮らしの中で気づいたことをメモしておくことです。
最近よく見かけるようになったお店、周りで話題になっている商品、子どもが夢中になっているサービス。そうした身近な気づきから、「この会社はどこで稼いでいるのだろう」「海外でも展開しているのだろうか」と調べてみる。そこから決算資料を読むきっかけが生まれます。
海外の街を歩いて感じた「なぜ」と、日本の暮らしの中で感じる「なぜ」は、実は同じ種類のものです。大切なのは、気づいたことを放っておかず、自分で確かめる一歩を踏み出すことです。
新興国投資で気をつけたいこと
成長している国の様子を見ると、わくわくした気持ちになるものです。ただ、新興国には、成長への期待と同じくらい、知っておきたい注意点もあります。ここでは代表的なものを4つ、淡々と整理しておきます。
為替の動きによる影響
海外の資産に投資すると、その国の通貨と円との交換レート(為替)の影響を受けます。現地で資産の値段が上がっても、円に換えるときに相手の通貨が安くなっていれば、円で見た利益は小さくなったり、損失になったりすることがあります。
カンボジアのように米ドルが広く使われている国では、ドルと円の動きにも影響を受けます。また、JICAの研究所が紹介しているように、多くの家計や企業がドルで借り入れをしていることが、金融面のリスクにつながりうるという指摘もあります。為替の影響は、日本企業の海外売上にも関係します。決算資料で「為替の影響」がどう説明されているかを見ておくと安心です。
政治や制度の変化
新興国では、政治の状況や法律・制度が比較的短い期間で変わることがあります。税金のルールや外国からの投資に関する決まりが変われば、そこで事業をしている企業の業績にも影響が出る可能性があります。
ニュースを見るときは、その国の経済の話題だけでなく、政治や制度の動きにも目を向けておくと、変化に気づきやすくなります。

情報の少なさと、情報の古さ
先進国と比べると、新興国の企業や市場に関する情報は、日本語ではとくに少なくなりがちです。英語の資料しかない場合や、統計が公表されるまでに時間がかかる場合もあります。
今回のツアーで多くのメンバーが感じた「思っていたのと違った」という驚きは、裏を返せば、それだけ日本で得られる情報が限られているということでもあります。情報が少ない分野ほど、うわさや一部の声が大きく聞こえやすくなります。出どころの確かな情報を、時間をかけて集める姿勢が欠かせません。
売り買いのしやすさ(流動性)
流動性とは、売りたいときに売れる、買いたいときに買える、という取引のしやすさのことです。新興国の市場は、日本の市場と比べて取引の量が少ないことがあり、思った値段で売り買いできない場合があります。
また、海外の不動産や未公開の投資案件などは、さらに現金化しにくいことが多く、契約内容も複雑になりがちです。現地で「今だけ」「あなただけ」といった話を持ちかけられても、その場で決めず、内容を十分に確認し、信頼できる専門家に相談することをおすすめします。
なお、ハナミラが今回の視察で大切にしたのは、新興国の投資商品を探すことではなく、成長する市場を見る目を養うことでした。こうした注意点も含めて理解したうえで、自分にとってどんな距離感がちょうどよいかを考えていくことが大切です。
仲間と学ぶから踏み出せた一歩(ハナミラメイト)
初対面の23名が「ファミリー」になるまで
このツアーでもうひとつ大きかったのが、仲間との出会いです。全国から集まった23名は、ほとんどが初対面でした。
それでも、旅を終えるころには「初めて会ったとは思えないくらい、みんなファミリーみたいでした」「ハナミラに入っていなければ出会えなかった、キラキラした個性の仲間たち」と、感謝の言葉がたくさん寄せられました。
同じ景色を見て、同じ驚きを分かち合った経験は、仲間との距離を一気に縮めてくれます。空港で驚き、街を歩きながら「10年後、この街はどうなっているだろう」と想像する。そうした時間を一緒に過ごしたことが、つながりを深めていきました。
お金や投資の話を、本音で話せる仲間がいること
大人になると、お金や投資、将来のことを本音で話せる友人は少なくなりがちです。「お金の話はなんとなくしづらい」「投資をしていると言うと、心配されてしまう」。そんな経験がある方も多いのではないでしょうか。
ハナミラには、「もっといい未来をつくりたい」「投資家として成長したい」という同じ想いを持った仲間が集まっています。決算資料の読み方で迷ったとき、相場が大きく動いて不安になったとき、気軽に話せる相手がいることは、学びを続けるうえで大きな支えになります。
そして何より、ツアーが終わっても、このつながりは続いていきます。

「母親だから無理」を越えられた理由
今回の参加者の中には、小さなお子さんを持つママや、仕事や家庭で毎日忙しくしている女性もたくさんいました。
「母親だから、海外視察なんて無理」「今は忙しいから、また今度」。以前なら、そうやって自分で限界の壁をつくっていたかもしれません。それでも一歩を踏み出せたのは、同じ想いを持つ仲間がいるハナミラだったから。帰国後、「ハナミラにいたから、こんな経験ができた」という声をたくさんいただきました。
ハナミラ代表・松下りせが、どんな想いでハナミラを立ち上げ、女性の投資の学びを応援しているのか。その歩みは、こちらのインタビューで詳しくご紹介しています。
海外で自分の足で歩き、自分の目で確かめた経験は、帰国後の日常にもきっと生きてきます。迷ったときに「あのとき一歩を踏み出せた」と思い出せることは、これからの挑戦を支える自信になるはずです。
まとめ
最後に、この記事のポイントを振り返ります。
- ハナミラは2026年9月、2泊3日・総勢23名で「カンボジア海外視察ツアー」を開催し、成長の途中にある首都プノンペンの街を自分たちの目で確かめました
- カンボジアは15〜64歳が約65%を占める若い国で、ここ数年は年5〜6%前後の成長を続けてきました。今後の成長率は、国際機関の予測で4〜5%程度とされています(予測値)
- 新しい空港、高層ビル、にぎわう商業施設からは、「人口・所得・インフラ」の変化が暮らしの景色として見えてきました
- この見方は、日本株の企業選びにも使えます。決算資料の地域別売上やIRページ、地図アプリなど、自宅でできる調べ方もあります
- 新興国には、為替、政治や制度の変化、情報の少なさ、売り買いのしやすさといった注意点もあります
ネットのイメージだけで判断せず、自分で調べて、自分の目で確かめる。今回のツアーでメンバーが体験したのは、株式投資の基本そのものでした。
投資を学ぶことは、お金を増やすためだけのものではなく、自分の人生を自分で選んでいくための力をつけることでもあります。どんな学び方を選ぶのか、どこまで投資と関わるのか。その答えは、人それぞれです。この記事が、あなたが自分らしい一歩を考えるきっかけになればうれしいです。